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2005年03月23日 (水)
名前はまだない  作者・w・

初めに、今回2005年春号四月6日締め切り予定の部誌には学生課の要請により
漫画研究部(以下漫研)らしく漫画を載せろとノお達し。たしかに今までのものは
創刊号のショーキング(森川製作)と最近の部誌のカンサイ製作の2つぐらいしか
漫研らしいものはなくイラストばかりのものとなっていた。
学校外の友人の一人曰く「同人の同人誌」という内容は当らずも遠からずと思う。
そういった理由で今回はその状況を打破するべく短編の漫画をかけたらいいなとい
うことでここにストーリーを作る。

舞台 某県の某大学、ありふれたどこにでもありそうなところでよし
時代 現代
ジャンル 読者に任せます(たぶん、今の頭の中ではミステリーなもの)
諸設定 


登場人物 斉藤高志(主人公)  最近つっこみが激しい気がする。
     藤村賢一(の男友人) 何か見れるらしい、きっと幽霊。
     喜多川春香(の女友人)同じ部の女の子。
     三木 誠 (主人公の友人)ノーテンキな部員。
     大橋 秦 (部の先輩)眼鏡なセンパイ、現実主義者だが言葉が時々変。

キャラが必要と思ったら増やす。
     





ストーリー



    主人公たちは世間的に痛い目で見られている漫研所属。
    中途半端なオタク・・・あるいわ、げんしけんもどき。
    特に夢も目的もない主人公の斉藤高志。
    高校を卒業し、ただ近いというだけでこの大学に入った。
    特にすることもなかったのだが、春先のサークル勧誘で流されるように
    漫研に入ることとなった。
    日を追う毎につれて学科や部の友人たちと仲良くなっていった。
    ある日、新人生歓迎会の後、斉藤高志、藤村賢一、喜多川春香、他数名と
    酒を買出しにでた。
    そのとき、ふと藤村賢一が妙なことを言い出す。
    あそこに女の子が立ってないか?
    そこは唯の踏み切りで心もとない遮断機が向かい合っているだけ。
    斉藤と喜多川の二人はからかうが彼には俯いて髪で顔が隠れた女の子が見えて
    いるそうだ。この踏み切りどちらからいっても右側に見えると。
    藤村はそういうものが昔からいると思ったら自然とそこにそういうようなも
    のが見える体質だとか。
    酔っている斉藤たちは笑い話としかとっていなかった。
    その夜、1年生たちは仲間の家で遅くまで酒を飲み夜が過ぎた。
    みんな眠ったとき、ふと斉藤は目を覚ます。
    カンカンカン・・・という遮断機の音に気づいて。
    時計をふと見ると夜中の3時すぎ。彼は眠気に流されて再び眠りについた。
   
    次の日、学校では一つの話題で持ちきり。
    内容は昨日の夜に踏み切りで事故があったとか。学校の生徒4人が車で
    踏み切りを渡ろうした時エンジンが停まり踏切内で立ち往生しているところに
    電車が・・・。
    運転手は気付いてブレーキをかけたのだが止まらず車ごと4人は撥ねられ
    全員死んだらしい。
    そのとき、彼らのうちの一人がちょうど電話していたそうだ。
    それを聞いてた彼らの友人が言うには「なんだ・・・こいつ、やば・・」
    その声は電車の衝突音にかき消されたとか。
    春先のましてこの新入学時期の平和ボケしていた時期に突然に舞い込んだ
    事件。皆、暇なのかこの話で持ちきりだ。

    唯の交通事故、唯の悲惨な人身事故、唯の一時期の話題、
    最初はそう皆が思っていた。
 
    しかし、その1週間後、再び事件が起きる。
    
    雨の夜、歩行中の生徒が車に撥ねなれて死んだそう。犯人はひき逃げ。
    またしても、犠牲者の女性は電話していたそうだ。
    「そうなんだよ、彼ね・・・あれ、電話聞こえにくいな・・・
    ちょ、何これ。。。」
    その後、無駄に激しい激突音を響かせ電話は切れたらしい。
    そのとき、受け手の携帯からはカンカンカンという遮断機の音が聞こえたそうだ。
    事件現場は遮断機がある踏み切りからは程遠い場所にも関わらず・・・。
 
    その3日後、
    よく晴れていた次の日に工事現場の近くで被害者が出た。
    買い物帰りと思われる男子生徒が工事現場の鉄骨の下敷きになって死んで
    しまったそうだ。
    今回もやはり電話をしていて受け手側が似たようなことをいう。

    こういった事件が毎週のペースで起こるようになる。
    学生、主婦、会社員、子供、老人問わずに。一人でも複数でも。
   
    しかし、被害者には共通したことがあり噂が流れ始める。
    事故は夜に起こる。
    被害者は必ず電話していて
    その時、受け手には遮断機の音が聞こえる。
    
    この3つだ。
    それ故、この尾根原(きっと松永に似た場所が舞台なんだろう)夜出歩くものは
    皆、携帯の電源を消して歩くようになった。

    そんな噂が街を覆う頃、季節は梅雨を迎える頃となる。
    
    斉藤達は所詮噂や怪談奇談的なものなんか唯の流行みたいに真に受けてないし。
    たしかに人が死ぬ事件が起きるがたまたまだろうと他人事。
    それよりも楽しみにしているゲームの発売日やアニメ放送のほうが気になる毎日。        
    
    大橋先輩に聞いてみると
    「幽霊?そんなもの人が怖がるときに見えるものだ。私が怖いのは金を貸した
     人間が逃げることだけだ。」
    なんてわけのわらないことを言う始末。 

    そして、ある時、ついに斉藤自身にも事件が降りかかることとなる。
    その日は雨。
    学校の実験が長引き遅くなる。
    彼は兼ねてより発売を楽しみにしていたゲーム(彼女と過ごした楽しい兵役時代)
    ※近未来の某国で繰り広げられる戦争時代を舞台に兵役につくことを余儀なくされた
    主人公を取り巻く男女の間に繰り広げられるハプニングやラブロマンスの数々。
    2年間という限られた時間の中に主人公は生き残ることができるのか!
    ギャグ有、ラブ有、サバイバル有の兵役が君を待っている!が売り。
    
    斉藤「なんで実験でシュークリーム作らないといけなんだよ。今まで散々、危険な
       薬品使って実験して爆発騒ぎもあったのに。作り方の説明参考が伊藤家って
       なんだよ。」
    愚痴り  
    ゲーム手に入れるため彼は夜遅い時間にも関わらず、ゲーム屋に向かうことに。
    その途中、店が空いてるかの電話をかける。
    店長とつたない会話をしながら向かっていると突然店長が
    遮断機の音が聞こえるとか言い出す。
    斉藤は冗談は止めてくれといって一笑し電話を終える。
    
    しばらくして店に着く。
    補足:もちろんそれ系統を売っているゲーム屋。
      店長の名前は佐藤。
      斉藤はこの店の常連で閉店している時間にも関わらず開けてくれている。
     
    店長のからかいを受けながらカウンターで支払いをする。
    その時、不意に遮断機の音が聞こえる。 
    それを店長に言うと
     店長「さっきの電話の仕返しか?」などと冗談扱い。
    斉藤は実験の疲れから来る気のせいだと感じて納得。
    財布からお金を出そうして小銭をばら撒く。
    慌てて拾おうとしゃがみこんだ時、ふと背中に何かがかかるのを感じる。
    何かと思って背中を触ると生暖かく、粘り気のある感触。
    体を起こしてそれを確認しようとして斉藤は気づいた。
    店長の胸に無数の太いものが生えている。
    それは斉藤の後方から伸びて店長、佐藤の背中を貫くような形をとり、
    まるで蝶の標本のように壁に縫い付けているように見えた。
    小さな棘を生やした大きな杭はぎしぎしと音を立てながら引き抜かれていく。
    そして、ふいに極端な速さで引かれたとき、佐藤の体は衝撃に耐えかねて
    爆散し辺りを朱色に染める。
    返り血が斉藤の顔や服を濡らす。
    その妙に不自然な生暖かさと鉄臭さを含んだ液体は日常とは全くの無縁すぎて
    斉藤は無言。事態を飲み込むのに時間を要する。    
    ハッと我に返った斉藤はすぐさま、店長に駆け寄るがどれを彼といっていいのか。
    四肢はばらばらになり、臓腑が散らばる、転がる頭部はまるでマネキンのよう。
    その時、ようやく彼は先ほどまで自分がいた後ろから伸びていた杭の出所を見る。
    いや、眼に入ったというべきか、そこにあるものはなんだかわからないもの。
    先ほどまではそこにいなかった物体。
    彼は今までに見たことないので形容できない。
    それは、巨大な生き物のようであり、機械のようだ。
    外皮を堅甲な皮膚のようなもので被い、所々に穴が開いたり閉じたりしている。
    そこからは何かが漏れる音が聞こえる。
    無数に生えた触手の先は鋭い槍のよう。触れるでだけで容易に
    突き刺さりそうに鈍く光る。
    顔といって良いのかわからないが外皮に覆われた禍々しい双眸のようなものを
    もつ部分、その下には出刃包丁をいくつも並べたような鋭利な歯と呼べるものが
    乱雑に蔓延っている。
    しかし、それは一つではない。大小はまちまちだがその体にいくつも存在している。
    ときより眼らしきものがぎょろぎょろと動く。    
    あまり広くはない店内狭しと体を持て余している体躯は天井に擦れるほど。
    裕に2mを超えている。
    動く度にぎしぎしと白塗りの天井は悲鳴を上げる。
    またその音と同時に灰色のタイルで覆われている床がそれの重さに耐え切れずに
    ミシミシと亀裂が入る。
    その不気味な獣は佐藤をから引き抜いた触手の返り血を自身の体に垂らし、
    嬉々と思える奇声を上げる。
    斉藤は我に返る。その現実離れした光景が返って頭を冷静にさせる。
    こんな馬鹿げたことが在ってたまるか。漫画やゲームの世界じゃないんだぜ?
    目の前の佐藤だったものを横目で見る。
    脳裏に過ぎるのはそれを自分に置き換えた姿。
    ここにいたら殺される。
    そう思うと同時、彼は横に飛ぶ。
    その瞬間、彼が今までいた部分を何本もの杭が生える。
    斉藤はくそ、と悪態を漏らす。
    体は直撃は避けたものの地を蹴った右足は刺の擦過により傷つき、ジーンズ
    のその周辺を色濃くする。
    日頃からもっと運動してればよかったなと思う。
    走れる・・・か?
    次の一撃はもう片方の足で跳ぶことでかわせるかも知れないがそれは無理だ。
    死にたくない、その一心で彼は這いずり、獣から離れようとする。
    そこに、衝撃が来る。
    突きによるものでない。
    先ほど放たれて床を穿った槍が鞭のようにしなり彼を弾き飛ばしたのだ。
    彼は途中にあったゲームソフトを並べた棚を巻き込み、激しく奥の壁にぶつけられ、
    肺に溜まった空気のせいでごふっと苦鳴をあげる。
    吐き出した息と同時に血が床に撒かれる。
    衝撃を受けた部分は激しい裂傷で衣服が刻まれ、血が滲み出ていてやたらと
    脈拍の大きさを感じる。
    さて、どうする?
    戦うか?逃げるか?
    荒い息を吐きながら考える。
    戦ったとしても得体の知れない化け物相手、
    それにこの傷ではそう長くは持たないのは明らかだ。
    選択肢は一つにしぼられる。
    痛みを堪え、壁を頼りに震える足で立ち上がり「獣」を見る。
    「獣」は佐藤の残骸を触手で弄びながら自身へと運ぶ。
    「獣」の体が邪魔でよくわからないが骨を砕き味わい咀嚼しているの
    音が聞こえる。
    辺りを見回す。
    通常はガラスのショーウインドウの部分は既にシャッターで覆われている。
    逃げ道は店の入り口だけ。
    「獣」との距離は5m弱。
    斉藤との距離は10m。
    走っても数秒かかる距離だ。
    壁伝いに出口へと近づく。
    一歩、一歩の足取りは重く、視界がぼやけていくのがわかる。
    よく漫画で使われる表現だなと自分に身に起こっていることに笑みがでる。
    まだ余裕があるのか、緊張によるものか。
    突如、彼はバランスを崩し、床に転ぶ。
    くっと痛みを堪える声の上を槍が穿つ。
    不幸中の幸い、転んだおかげで助かった。
    「獣」は食事を終え、次はこちらというわけだ。
    死にたくない、そう思うと今まであった過去が頭に過ぎる。
    これが走馬灯というやつか。
    自販機でコーラを買おうとしてお汁粉が出てきたり、高校のときエロ本を買おうとして
    店員に歳聞かれて買えなかったり、マックでスマイル一つなんて注文している
    場面。しかも、レシートに明記してくれとか言ってるし。
    なんで赤裸々失敗ストーリーばかりなんだ! 
    こんなときに馬鹿かオレ・・・
    そう思うと少し肩の力が抜けた。
    とにかくここから動こうと壁に手をかけて立ち上がる。
    しかし、眼前には手がある。
    一瞬、自分の手かと思った。
    しかし、自分の手にある感触は冷たい壁。
    手の生えている先を見る。
    瞬間、彼は飛びのいた。文字通りに。自分の怪我など忘れて。
    それは壁から生えていた。
    さらに、足も生えている。
    音はなくすーとそれは長さを増していき、徐々に伸び、その付け根が明らかにな
    っていく。
    斉藤は飛びぬいた先でそれを見届ける。       
    突如、斉藤は寒気がするのを感じ、右の方向を見る。
    そこには黒い塊があった。
    すぐにそれがなんであるか分った。
    髪の毛だ。
    前髪を垂らし、目元が隠れわずかに口が見えるだけの人の顔。
    音もなく出てきて顕になる頭部。大きさからいって少女のものか。
    斉藤は恐怖で動けない。
    先ほどよりも強く早く脈打つ心臓が耳のそばにあるかのよう。
    顕になった頭部は一瞬ぴたりと止まる。
    そして、ゆっくりとこちらのほうに向く。
    少し跳ねた黒い髪、表情の分らない顔。
    先ほどから耳に聞こえるのは遮断機の音。
    あのカンカンカンという乾いた音。その音が辺りに鳴り響いている。
    ひた、ひたと間合いを詰めて。
    斉藤は思う。これは何だと、しかし、よくわからない。
    ありえないと即座に否定する。
    脳裏に過ぎるのは幽霊の類。
    気づいたら彼は後ろ手に座ったまま後ろに下がっているのが分った。
    しかし、背中にとん、という軽くものが辺りそれは阻まれる。
    顔から眼を離さないように横目でそれを見る。
    いや、見ようとした瞬間、背中が掴まれそれがなんであるかわかった。
    それは先ほど壁から出ていた腕。
    状況から考えて彼女のものと断定。
    振りほどいて間合いを離す。
    その衝撃に彼女はわずかに姿勢を崩すがすぐに元に戻り、にじり寄る。
    一歩、また一歩。
    壁から突如湧き出た少女と危険な「獣」。
    くそ、前門の虎、後門の狼ってやつか。
    こんな言葉、一生使わないと思ってたぞ、今日はなんて厄日だ。
    辺りには衝撃で横倒しになった棚、散らばるソフトやそれらの破片、
    削り取られた天井の一部までもある。
    斉藤は首筋が汗でじっとりしているのを感じる。
    恐怖のためだけではない。
    室温が上がっている。
    甘い芳香を放ち、後味は刺激を含む臭い。
    見れば砕けた蛍光灯から火がつき、チラシやポスター類を燃え煙を上げる。
    初めは小さな火の粉が次第に大きくなり天井にまで達したのだろう。
    まずい、このままではまずい。
    店を出ない限り、絶対死ぬ・・・
    どうする?獣を見る、触手による攻撃に飽きたのかよくわからない奇声を上げて
    ぎしぎし体を鳴らしながら前進する姿は滑稽だと思う。
    距離はもう5mと切っている。
    「普通、漫画だと、こんな展開にはイケてる人が助けに来るもんだろ。」
    言ってみたところでそんなものは期待できない。
    しかし、突如、別のものが来た。
    壁抜け少女が突然抱きついてきた。
    油断した。
    肩を掴まれるのを必死に振りほどこうとするが、凄まじい力。
    この華奢な体の一体どこからくるものか。
    髪に隠れた顔からは表情をうかがうことができない。
    「獣」とちがって精神的な恐怖がそこにある。
    「貞子か、おまえは!」と叫ぶ。
    その時、別の衝撃が来た。
    しかも、2つ。
    それは上方から叩きつける圧力。
    それは横方から突き飛ばす衝撃。
    斉藤の眼前の蛍光灯とその基部が落ちてきた。
    ちょうど、彼に取っ組み合う形で抱きついていた少女が下敷きになる。    
    一方、斉藤はというと尻餅をついた姿勢。
    口をだらしなく開けてそれを見る。
    なんだってんだよ、さっきから近づいてきたり、掴みかかったり・・・
    挙句、突き飛ばして自分が下敷きになってる。
    馬鹿かこいつは。
    下敷きの少女を横目に立ち上がって前を見る。
    「獣」との距離はもう3mほど。
    踏み込めば1秒ちょっとという間合い。
    彼は考える。
    思考は一瞬、それは逃げることを選ぶ。
    相手よりなるべく遠く、しかし、入り口へ向かって。
    獣が近づくのより早く、早く、足取りは重いが気持ちは早い。
    「獣」は突如、身を低く構えると、跳躍した。
    その巨体に似合わずその動きは速い。
    3mの距離などなかったかのように間合いをつめて着地する。
    突然のことに斉藤は身構えることすらできてない。
    だが、着地した先は彼の前でなく、少女の前だ。
    頭に疑問符を浮かべる斉藤。
    しかし、それを知ってか知らずか「獣」は一つの挙動を示す。
    ごつごつとした岩のような腕で少女の体を締め上げる。小さな体は軽々と中に
    浮かびぎしぎしと悲鳴を上げる。
    「ーーーーー!」
    彼女の悲鳴が聞こえたような気がした。斉藤の耳には。
    実際のところ彼女は声を上げてはいない。
    代わりに別の声が響く。怒号とも哀願とも知れる音。
    それは可燃物を飲み込み身を踊らせる焔よりも、徐々に崩れる部屋の音よりも、
    「獣」放つ音よりも小さい。
    だが、それはその空間に響いたのを感じる。
    斉藤は気づいた。
    声の主は自分であることを。
    自分が「獣」に向かって駆け寄るのを。
    何故自分が走ってるのかわからない。
    その右手には一つの棒が握られていることは。
    それは金属バット。
    見れば、昭和調の絵でかかれた目に炎が入った熱血親子がにこやかにバットを
    振っている。打球は場外に消えていくという誇張振り。
    それを目尻に収めると、彼は走りながら一つ大きく息を吸い吐いた。音と共に。
    「巨人の星の星 飛雄馬は打者じゃねぇ・・・」
    金属バットを振りかぶり、一息。
    「投手だろうが!」
    金属バットがもつ独特の打撃音、
    鉄に鉄をぶつけたような快音。
    少女を締め上げる幾条ものごつごつとした老木のような衝撃にバットがくの字に歪む。
    その衝撃に「獣」の腕は砕けない。
    だが、役目は果たされた。
    手の先を激しく殴打されることによる衝撃。
    「獣」の手首が折れ曲がる。
    斉藤の力はそれほど強くはない、ただ単に火事場の馬鹿力。
    それは手首を支点に手の指らしき部分を作用点と力点に働くてこの原理。
    一度、力が加われば後は自重による加速による崩壊。
    ただそれだけのこと。   
    「少しはリストアップしておくんだな、この部分マッチョが!。」
    そう吐き捨て、使い物にならなくなったバットを投げ捨て
    少女を折れ曲がった腕から奪う。
    抱え上げた少女は軽い。黒いワンピースのところどころは破け、焦げている。
    冷たい感触が腕に来る。
    体格でこちらを圧倒している「獣」は何故このような事態になったか理解に苦しむ。
    体に浮き彫りになっている無数の口という口から奇声を上げる。
    それは、今、身に起こった結果と憤慨と抗議の叫びを含む轟音。
    あまりの重低音にそこにある全てが軋む。
    しかし、斉藤はそれは無視した。
    「おい、だいじょうぶか?おい。」
    彼女を強く、だがやさしく彼は揺するが返事は無い。
    脳裏には自分がやってることに疑問が浮かぶ。
    こいつはさっきまで自分を襲ってきていたんじゃないのか?
    あいつの仲間なんじゃないのか?
    さっき、俺を庇った恩返しのためか?
    いや、こいつは俺を襲って偶然そう見えただけじゃないのか?
    ほっといて逃げていれば助かったんじゃないのか?
    浮かんでは消えていく想い、そのほとんどは疑念と疑惑。
    自身が行った行動への意味を思考する。
    彼女は動かない。乱れてはいるが目元から頬にかけて掛かって流れるように
    被った黒髪が「獣」の怒号で揺れる。
    「おい、なんとか言えよ、おまえ!」
    斉藤は再び彼女を動かす。
    斉藤の眼は見る。
    彼女の口が微かに動くのを。
    見逃しかねない微かな動き。その動きは何かしらの意志を含む。
    小さく、だが力強く彼は頷いた。
    「まかせとけ、黙ってそこにいろよ。」
    彼は彼女を抱き抱え身を起こすと「獣」見た。
    いや、睨んだ。先ほどまでの弱々しい狩られる獲物の眼ではなく敵に立ち向かう
    意志と決意を含んだ眼で。
    何かを感じたのか、それとも獲物の分をわきまえないこの男への憎悪か、「獣」は
    轟音を轟かせ、身を屈め、一瞬でこちらへと飛ぶ。巨大な体と質量は己を弾丸と
    変える。
    加速と自身による重みを武器に彼らを押し潰すという動き。
    蹴り足らしき部分による過度の重みでヒビ割れ、砕け、陥没する床を踏みしめる音
    を効果音に、崩れる店内をBGMに獣は獲物を幾数の眼で見る。
    恐怖に怯えるか弱き獲物の姿を。逃げ行く姿を。
    だが、それは違った。
    それの眼は死んでいない、こちらを見据え強い決意を宿し、その口元はこう
    告げた。
    「いい加減、2度ネタのマンネリなんだよ!」
    斉藤は叫ぶ。
    そういった意味が「獣」の思考に過ぎる前に獲物は走っていた。
    無謀にも自身へと。既にトップスピードに達している。
    そして、次の瞬間それらはぶつかった。
    獣には軽い衝撃が走るが、何の問題も無いもの。
    あとは、自滅した獲物を食すだけだと考えると唾液が溢れた。
    だが、あるべきはずのものはいない。
    全身の眼を用いそれに気づいた。
    斉藤は少女を抱え中に飛んでいた。高く、[獣」よりも高い。天井すれすれの位置を。
    軽い衝撃は「獣」の爪を、顔を。肩を、駆け上がった衝撃。
    斉藤は顔をしかめない。
    痛いのは分っている。全身の骨が軋んでいるのも、一歩を踏みしめるたびに傷口から
    泡を立てて血が吹き出たのも、全部分っている。
    だが、それ以上に死にたくない。
    それが彼の力を背中を押す。
    どんな生き物でも窮地に陥れば感じる想い。
    死にたくない。そのはかない想い。
    それとは別にもう一つを想う。
    この自分を襲った不可解な少女を助けたいとも。
    着地の衝撃でまたも血が吹き出、床を濡らす。
    もう血が出すぎたのか出る量はそれほど多くは感じれない。
    これほどの傷でも痛みも感じない。
    危険な時に出るアドレナリン、脳内麻薬とはよく言ったもの。
    着地の足は、急ぎ向かう目指すは店の入り口。
    そこから出て、しばらく走ればこの危険な化け物から逃げることができる。
    そうしたら救急車を呼ぼう。
    あとは警察かどこかのヒーローがこいつを倒してくれて万事解決だ。
    走る、走る、10mあった距離もあと1秒と掛からない。
    しかし、彼の顔に絶望の色が落ちる。
    彼の足はたたらを踏んで制動をかける。
    入り口前の天井が崩れ危うく下敷きになりかけた。
    無常にも脱出口は塞がれた。
    力無く、振り返る。
    同じく振り返った「獣」
    触手を鞭のようにしならせ、喜びを表現しているようだ。
    何度もだめかと思った、だけど、もうだめだろ。
    もはや諦めムード一心。
    肩の力が抜ける。
    興奮の冷めから一気に痛みが戻る。
    それに顔をしかめる。
    もはや、密閉された室内。逃げ場はない。
    さっきみたいに神業的に立ち回ってもこの炎熱により、焼けるか、燻製になるのが
    オチだろう。息苦しい。酸素が少なくなってきているのか。
    酸欠での絶命パターンも増やさないとな。
    そんなことを考えると、ふと口元が緩んでしまう。
    その笑みを見、「獣」は思う。
    ついに観念したかと、壊れる人間を何度も、何度も己の手で生み出してきたが
    最後は皆こんな顔をした。
    そんな彼らを自分はどうしたかと。
    いくつもの頭部が思い出す。
    それはこうだ。
    散々弄び、蹂躙し、苦痛に歪み切ったところで喰らったと。
    それが分るとすぐに行動に出た。
    身の回りを踊らせていた触手を振り回し、打ちつけるように獲物に伸ばし、
    突撃のため自身の体を身構えた。
    触手がぶつかる瞬間、ただ呆然としていた斉藤は動いた。
    またも「獣」に走り寄る姿勢。
    それを獣は伸ばしていた触手で斉藤を叩き飛ばす。
    斉藤の体は文字通り吹っ飛んだ。
    空中を飛ぶように。
    だが、少し違った。
    自分から飛んだのだ。
    風切り音を上げながら飛来した硬い面を踏み台に、その衝撃を己の加速へと
    変えて跳ぶ。
    向かう先はショーウインドウ。その外には鉄のシャッターが下りている。
    手の中の少女が自分にしがみつく力を感じる。
    「オタクをなめるんじゃねぇ!人よりも熱い気持ち!」
    斉藤は吼えた。力いっぱい。
    
    言ってる事はわけが分らない。自分でも馬鹿言ってると思う。
    だが、吼えることで力は来た。ハンマー投げの選手が声を上げる理由のように。
    右肩に走る衝撃。腕に抱える少女を庇う様に、ショルダータックルをガラスに叩き込み
    、割れる。
    彼の眼下には先ほど投げ捨てたバットが窓ガラスにヒビを作ってるのが確認できた。
    「いけぇ!」
    彼の体は止まらない。ガラスをぶち破り、鉄製のシャッターを根元からぶち抜く。
    熱と、衝撃による度重なる負荷が掛かった店内はもはや立っているのがやっとだった
    のだろう。
    斉藤はシャッターに描かれている青い狸の腹辺りについている袋らしきところから斉藤の
    身が飛び出した。
    余程の勢いだったのだろう。彼の体はきり揉みして空を飛び、アスファルトの上を転がる。
    何度も何度も転がり、そして、止まった。
    店につく頃、降っていた雨は既に星空の元に消えている。
    荒い息の中、身を起こし店を見る。
    彼が穿ったシャッターのところが一瞬光る。
    店内の酸素は燃焼によって多くを失っていたところに新しい通気口による新鮮な夜の空気。
    それに喜び、諸手を上げて喜んだ、歓喜の声で。
    まず、それは地響きを伴う振動により辺りを揺らす。
    次に来るのは、激しい光と耳をつんざくばかりの爆音だ。
    それが再び辺りを激しく揺らす。
    その激しい二つの振動により、店は降参を告げた。
    窓という窓はガラスが割れ、そこには真っ赤に燃える炎が顔を出し、
    鉄筋をバールで曲げるようなくぐもった音を上げて、店が傾いていく。
    最初はゆっくり、そして加速し、ある境を持ってピークを迎える。
    店は崩れ、2階部分であった屋根が今や1階になった。
    あとは燃えるだけ。
    その光景はキャンプファイヤーのように見え、火の粉を巻き上げ周りの建物を巻き込む
    勢いだ。
    
    斉藤は呆然とそれを見届ける。
    荒い息を吐きながら、ものが燃える甘い芳香と自分から出ている紅い液体が離す鉄臭さが
    香る中。満身創痍でだが力がある声で、
    「終わったんだよな、これで。」
    一息おいて、
    「俺たち助かったんだよな。」
    胸に抱く少女から返事はない。
    だがそれを答えにして彼は笑みを浮かべる。
    「結局、お前何なんだ?」
    やはり答えは無い。
    「なんとか言ってくれよ、なぁ?」
    そう問いかけて、彼女を見ようとした。
    しかし、それははばかられた。
    彼が見据える先には動きがある。
    陽炎立ち込めるたいまつから影が上がる。
    それは次第に明らかに大きくなっていく。
    体の大部分がひしゃげ、右腕と左腕らしき部分がもげ、
    元の体躯の半分以下になった姿がそれを引きずる。
    今も燃えている全身を気にせず、「獣」は咆哮を上げる。
    その咆哮にもはや耐えられないのか所々から液体を噴出す。
    「ターミネーターかよ。」
    耳に届く咆哮が豚のように聞こえ、斉藤は失笑する。
    逃げようと思う。
    足に力を入れる、手を地面につく、姿勢を正す。
    だが、その全てに感覚が無く、また動かない。
    今度こそ限界だ。
    意識が遠くなる。
    黒い夜空のはずが視界は白くなる。
    うっすらと水面に広がる波紋のようにどんどん白んでくる。
    そのほとんどが白い世界で彼は感じた。
    何かが斉藤の近くに立っていることを。
    食われると思った。
    何故なら、先ほど倒したと思った化け物がまだ生きていたから。
    その身近なものは動いた、緩やかな舞を踊るような流れる動き、
    暖かな緩やかな優しい風が吹き、斉藤の頬を撫でる。
    炎による熱風に負けずに。
    耳鳴りの酷い耳には物が燃える以外の音を拾う。
    風鳴りとも、炎鳴りとも、倒壊音とも聞こえる声。
    それを最後に、斉藤は白んだ視界で見た。
    9割型覆われた白に溶け込むように、獣がいたはずの場所にいた影が薄れ、
    消えた。そのとき、ガラスの粉を撒いたような光を一瞬、瞬かせそれも消える。
    視界の片隅の別の影、自分の側に立つ影が動きを止め、上の部分が軽くこちらへと
    動く。風に吹かれて、だが優しい春の夜風に抱かれるようなものが揺れ、
    その下にあるものを明らかにする。
    白くてよくわからない。
    だが、そのある部分が微かに動いたように感じた。
    耳鳴りのせいで今はキーン、という高い音しか聞こえない。
    もしかすると、動いたように見えただけかもしれない。
    だが、その動きを彼は理解した。
    きっと、自分は微笑んで返しているはずだ。
    それを見た、側のものは、消えた。
    またもやガラスの粉を撒いたように光を残し、それも消える。
    そこに聞こえるのは遮断機の音。
    あのカンカンカンという乾いた音。
    しかし、いつも聞いているよりもずっと柔らかい気がする音。
    それを子守唄と感じた刹那、彼の意識は白に消えた。


    ある晴れた夕方、全てのものが朱に染まる頃、いくつもの部屋を持つ
    一つの建物で動きがあった。そこには男が3人と女が1人いる。
    

     喜多川「ちょっと、高志あんただいじょうぶ?倒れたって聞いたけど。」
        「特に頭とか。もしかして前より良くなった?」     
     高志と呼ばれた男がベットに起き上がり答える。
     斉藤「わざわざ、見舞いにきてくれるなんてありがと。後の言葉は聞き流して
        おくよ。」
     藤村「なんか、倒れたって聞いたけど全然元気そうだな。
        何か悪いものでも食ったのか?」
    眼鏡を鼻先に上げながらニヤいて言う。
     斉藤「昨日は大変だったんだって、実は・・・」
    彼らは眼をぱちくりさせてその話を聞く。
     喜多川「なにいってんの、あんた。たしかに佐藤ゲーム店は火事になって
        その辺りの建物も結構燃えてちゃったけど、そんなものあるはず無いし
        全然怪我無いじゃん。」
    斉藤は思う、たしかに、昨日あれだけの負傷をしたはずなのに今や全くといって
    いいほど怪我らしきものが見当たらない。
    運ばれて来るとき衣服はぼろぼろだったらしいし、焦げ目も血の跡もついてたそ
    うだが彼の体には傷らしき証拠は残ってない。
    そのことに、担当の医者は首をかしげる始末だ。
     大橋「まぁ、無事で何よりだ斉藤。そうでないと我が部の人間ではない。」
    そう断言し、一息、
     大橋「全てのオタクに幸あれ!日本はオタク文化が支えていくのだ。」
    どこからその自信が来るのか。しかし、大橋の顔には疑問というものが見られない。
    それを見た3人は肩を落とし、ため息を吐く。
    
    いつもの日常。
    いつもと変わらないものがそこにある。
    きっと、昨日事は夢のようなものなんだろう。
    疲れによるものか、ゲームのしすぎによるものか。
         
    そして、彼は窓を見る。
    朱色の線は除々に下がり、夜のとばりが下りてくる。
    そこに、ガラス粉を撒いたような光が煌き、そして消えるのを感じた。

後日談、
    その後、遮断機の音を伴う事件は起こらなくなった。
    街からは噂は消えていく。
    所詮は流行りというやつだ。
    藤村から聞いた話だが、あの遮断機のところで女の子を見ることはなくなった
    そうだ。この事件に関係があったのかはよくわからない。
    わかるのは、街にあるいつもの日常。
    何も無いことが幸いなのだろう。    
    
    
     


     
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