FC2ブログ
情報の真偽は自己責任☆
2007年08月30日 (木)
何時ぞやのキミセカが終わったので掲載。

------------------

ホラ/ふき/シタイ



エガマック











――ふと、目が覚めた。




えっと、ここはどこ?


天井? 


タイル張りの天井……ということは、ここはいつもの病室かな。

あれ……なんか体が動かない。なんでだろう。



これが金縛りっていうものなのかな。

ふーん、金縛りでも眼は動くんだね。




あれ、いつもの病室とは違う……




病院なんだけど、いつもと家具の配置が全然違う。
それにやたらとプールとか、注射とかの消毒液のニオイがキツイ。











かた、くちゃ、にちゃ、ぽと。












――何、今の音。なんか、ぐにょぐにょしたようなモノをつついているような湿った音。

それに、金属のこすれるような、そう、まるでハサミのような。







誰かいる?



誰かいるの?



誰だろう? 







寝ていて動けない、わたしの頭の上のほうから聞こえるソレは見えない。








でも、何かいる。それも2人ぐらい。

ふと、水の中にいたような聞きづらさが消えた。と思ったら、会話が聞こえてきた。










「あー、めんどくせ。こんなもん切って、ばらして、取り出して、辛気くせぇたりゃありゃしねぇ」






「そうぼやくなって、それが仕事だろ?
 “不幸”にも死んだ連中からフレッシュなモンを取り出すだけの簡単な作業さ。
 それにたまには役得ってもんもあるもんだ」








何話してるんだ、この人たち。
それに死んだって……

もしかして、わたしが――

いや、そんな……それはあまりに突然じゃない?


そりゃ、ちょっと前から具合悪くて入院してて、全然良くならなかったけどさ。

だからって、そんなのイヤだ。認めたくない。

こりゃ何かの夢だ。悪い夢だよね。臨死体験なんてよく聞く話さ。
きっとすぐに目がさめて、いつもの毎日が始まるんだよね?

パパやママ、お兄ちゃんや友だちがお見舞いに来たりしてさ。






そんないつもの毎日が始まるんだよね!













「――それにしてもコイツら“不幸”だよな。家族に見捨てられて。
 いや、言葉が悪いな。家族に選ばれて」


「だな、入院給付金目当てで、薬もられて、“病気”にさせられて。
 元気になることなんて絶対にないのに、家族は懸命なフリしてさ。
 そして、搾れるだけ搾り取ったら“死んだ”ことにするんだぜ?」

「そうそう、最期の保険金ってか。
 確実に死ぬんだから、めっちゃ保険かけちゃうぜ?
 絶対に当たる宝くじっていいよなー。俺たちの給料何年分だよ」

「あぁ。全くだ。
 でも、そんなに貰ってるクセに、まだダメ押しに搾るんだぜ?」













 
――何話してんのこの人たち。





家族に見捨てられた? 
保険金目当てで、病気にさせられた?
そして、挙句は死んだことにする?

冗談じゃない。冗談だよね。そんなの何かのフィクションだ。

こんなこと絶対にありえない。
だって、あんなにわたしの家族はわたしのこと可愛がってくれてんだよ?

すぐに良くなるって励ましてくれてたんだよ?

今度はどっか旅行に行こうとか言ってたんだよ?




なのに、なのに、なんで――











いやだ、死にたくない、死にたくない。

わたしが死んでる? 
いやだ、認めない。わたしは死んでない!

いやだ、イヤだ、いやだ、嫌だ、いやだ、
厭だ、いやだ、イヤだ、いやだ……

なんで、動かないの、なんで動けないの、
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで!!








「こんなのイヤッ!!」







よく知ってるわたしの声がした。
それをわたしの耳で聞いた。

さっきまでの金縛りがウソのように消えた。

体を起こして、自分の手の平を握ったり、開いたりするのを見ながら実感した。









「良かった……わたし生きてる。まだ死んでなんてない」








ふっと、体の力が抜けた。
生きてるって、なんてすばらしいことなんだろう?

当たり前のことに感動した。












そんなわたしの後ろから声がした。
















「おっ、ゾンビさんのお目覚めだ。ようやく薬が切れたらしい」


 
「よし、せっかくの若いコだ。たまの役得始めようぜ」









そうキモく笑った血だらけの白衣が2人。













わ        を      り           
     た       ヤ             
       し             は  じ                               め    た――









------------------





「――そして、そのコは、
 犯られて、殺られて、解体られて、売られたの」







「うわー、なんてスプラッタ。
まさか、その挽き肉が使われてたりしたらイヤだよね」








所変わって、ここはファーストフード店。

年考えろよ、ってカンジの服装の赤い頭のおしろいピエロが、パンで挟んだハンバーグを売ってそうなとこ。


ぐうぜん、街中で出会った見知らぬ2人のヒマ人。

たまたま、変に意気投合。自慢の都市伝説なんか語ってる。

線が細くて華奢なセミロングのコが、活発そうでよく笑うショートヘアのコに話してた。



バニラなのに何故か、チョコレート風味のシェイクを飲みながら答えるショートヘア。







「でも、よくある話じゃない? 医者と家族の黒い関係ってさ。
 入院給付搾れるだけ搾った挙句、死亡保険金まで取っちゃう。
 クスリで“死んだ”ことにしたゾンビさんから、
 フレッシュな純潔と内臓とかまで奪っちゃう。
 ホント、お金が絡むと、ヒトって怖いよねーって都市伝説」




「まぁ、そうだけどね。でも、この話は自信あったんだよね、わたし。
 ありきたりか……うーん、ちょっとショックかも」




「あはは、気にしない。気にしない。
 私なんてしょっちゅう友達に論破されてるよ。
 ホント、ツッコミ激しすぎでさ」




「へぇー、そうなんだ。今度会ってみたいな。その人」




「……いや、やめといたほうがイイ。
 きっと、生きてるのがバカらしくなるぐらいツッコまれるから。
 それよりもさ。今の話もっとコワくしてみない?」


 
「えっ、勝手にそんなことしていいのかな。
 人の話に尾ひれつけるなんて……」




「別にイイんじゃない?
 噂なんて人が話してるうちにどんどん変わってく伝言ゲームみたいな もんだし」







そういうもんかなー、とポテトをかじるセミロング。
そういうもんだよ、とシェイクを飲むショートヘア。




そこに、店にあったテレビから声がした。どうやらニュース番組らしい。









『男は、医療用モルヒネを常用していたらしく、同僚の看護師や医師を殺害後、逃走し――』








「うわー、これぞまさにってぐらいのスプラッタ。
 ラリって、同僚殺して、死体を刻んで、安置所の死体も刻んで。
 それでも飽きずに、足りずに病院の医者と理事長の自宅にまで解体し に行っちゃうって。
 並みの都市伝説よりもコワいなこりゃ」








あぁ、食欲なくすよ、とファーストフードにかじりつくショートヘア。
よく食べれるなー、と苦笑いで、それを見るセミロングのコ。







「あっ、そうだ。こんなのどうかな。
 わたし、話の続きっての思いついたんだけどさ」






「えぇー、マジ!? いったい、どんな?」









 
「えっとね、実はね、さっきのコは生きてるの」














「えっ、どういうこと……?」







「――そう。
 ヤられそうになったそのコは、ヤられながらに、ヤっちゃてるの。
 そして、男の顔を剥いで、被って、自分を“死んだ”ことにしたヤツらをヤりに行く。
 看護師、医者、理事長、そして、自分の家族をヤっちゃう。
 もちろん、フレッシュな死体は全部、刻んで、解体して、ぐちゃぐちゃにしてね。
 そして、すっかりはまっちゃったそのコは、殺した人の顔を被って、今も解体ショーを続けてる」





「おぉ、よく考えるね、そんな展開。
 でも、殺してからわざわざぐちゃぐちゃにするのってめんどうじゃないかな?」






「そりゃめんどいけどさ。時間も体力もかかるよ。
 うーん、それじゃあ、敢えて理由がいるならこんなのはどうかな。
 ≪最初にヤッたときに、“自分”の死体か、他人の死体か解らせない
 ようした≫なんてどうかな?
 それに全部おんなじような猟奇死体にすりゃ、モル中の男のせいにもできるしね。
 モル中の男は、すでに自分が殺してるから、犯人として見つからない。
 自分は法的には“死んだ”ことになってるから、ケーサツにも探さないし。
 まっ、一度ヤるのにハマったら、普通のヤり方じゃつまんないってのもあるかな。
 やっぱ、ヤり方に凝ったほうが、自分らしさがあって楽しいしさ」





「――≪死人が殺しにやってくる≫か。
 うわっ、なんてゾンビな殺人鬼。タチ悪いなこりゃ。
 現代の金銭至上主義が生んだ因果な怪物(モンスター)。
 これぞ、まさに都市伝説ってヤツだね。
 今度、友だちに話してみるよ」








「ふふ。ツッコまれないようにね」







「……はは、たぶん完膚なきまでにツッコまれるよ。
 アイツこそ人の心を殺す殺心鬼に違いない」







「何その表現。面白いな。まぁ、それでもわたしは応援するよ」








肩を落して目が泳いでるショートヘア。
そんなカノジョにとびっきりの笑顔を向けるセミロング。








「うん……応援ありがと。
 あれ? その眩しい笑顔、どっかで見たような。
 たしか、この前テレビに出てたような……」






「うーん。ばれちゃったか。
 そういえば、最近よくテレビに出てるかも……」





「えっ、マヂデ!?
 実は、あなた、アイドルだったとか!? それか有名人!?
 うわっ、すごいな。感動した。
 そりゃ、今のようなスマイルされれば、ときめくのもムリないか。
 これぞ0円の営業スマイルと100万ドルの笑顔の違いだよ」






 
お願いサインして! 
と、ハイテンションでサインをせがむショートヘア。






うーん、どうしようかな、と、はにかむセミロング。









そこに、店にあったテレビから声がした。どうやらニュース番組らしい。











『被害にあったその家族には、例の事件があった病院で既に亡くなった長女が――』













テレビに映った少女の笑顔と、その名前。
サインをしているセミロングと、そのサイン。


それは全く違わない。



                             

≪ホラ/ふき/シタイ≫(終)



トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック