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2005年10月16日 (日)
●No.01-1 起章【The price of a life】


人ごみの多い雑踏を歩く黒髪の男。
ブランドものか丸と線で象られた模様が両襟に入った黒コートを風に靡かせ、退屈そうな表情で煙草を吹かしている。
タールのどぎつい味が肺腑に染み渡る。

「いつ見てもシケた街だ」

人通りの多い繁華街の街並み。ネオンや信号の明かりがチカチカ、と点滅し、道行く人をその色に染める。
かなり昔になんとかって名前の総理大臣が【クールビズ】を進めたのに仕事帰りのサラリーマンはスーツにネクタイを締め、同僚達と連れ立って歩き、学校帰りか制服の女子達が怪しい外国人の露店の品にきゃぴきゃぴ、とはしゃいでいる。

俺とすれ違う人は皆、俺のことが見えていないのかはたまた自分の歩く道筋しか見えていないのか早足で歩く。
俺のように街中を見回しながら歩くヤツの方が少数派か。
まぁ、いるとすれば田舎から都会に出てきたばかりか世間知らずのヤツだろう。
自分以外そこにいないとでも言うように、自分以外の人は構造物と同じ背景だとでも思っているのか表情一つ変えない。自分と他人に一定の間隔を保ちながら彼らは歩いている。
その表情のどれを見ても変哲の無い面白みの無い顔ばかりだ。
自分達がこうしてここを歩いていることに何の疑問も持たないのか。コイツらはこれが極当たり前と思っているのか。

国や親、周囲の環境が敷いた【レール】をそれが至極当然で当たり前だと思い、それを大切にする。

別に他人が何を信条として生きようが構わないが、この【レール】は時の権力者達が自分に都合の良い人間に作り変えるためのものだ。

上が出す命令に何の疑問も反感も持たず忠実に働き、物を作り、税金を納める血肉でできたロボットへと。


【勉強して、良い大学に入って、良い企業に入って、良い家庭を持って、良い老後を送る】


昔も今も変わらぬ不変の教え。誰もが一度は聞いたことあるだろうベタな言葉。
そして、ほとんどの人が鵜呑みにする魔法のスローガン。

たしかに、まちがってはいない。社会に出るには最低限の学力と礼儀は必要だ。
もし、これらが欠けていたなら最低限のコミニケーションを取ることが出来ない。
やってもらいたいことがあっても単語の意味が通じなければ使い物にならない。
遅刻の常習犯で仕事や約束に遅れるだけでなく、その謝罪の断りすら出来ないヤツが仲間にいたらそこに不具合が置き破綻する。
集団をスムーズに回すためにはどうしても最低限の理を義務教育や"世間の常識"として叩き込む必要がある。


【何が正しく、何が悪いか、人に好まれる思想と人に嫌われる行動をするとどんな罰が待っているか】を教え込まれる。


時の権力者達が顎で使えるようにするために、彼らの生活をロボット達が不平不満を言わずに支えて行くように"調教"する。
"調教"なんて言葉を聞くとあまり良いイメージは湧かないと思うが、これが事実だ。
ヤツラは、甘い言葉と目先の利益を餌、耳障りの良い正論で"調教"という不味い物を美味しく見せて俺達に食わせる。
俺のように気づいた連中はこれが馬鹿らしく思うはずだ。何故、俺が脂ぎった指や顔で腹を出した小汚い政治家や企業家のために一度しかない人生をかけて税金や労働力をくれてやって養わないとならないんだ。
同じ一生という時間のうち彼らは一時間のうちに数億を動かすが、俺達のような庶民はバイトなら自給800前後、正社員なら1500前後しか金が入らない。

【人は等しく平等だ】なんて綺麗事を並べてる割に現実はこうも厳しい。

地位が上のものは少ない時間でたんまり稼ぎ、大型クルーザーとビーチを貸し切って豪遊するが、庶民は一生かかってローンをかけながらのあばら小屋のマイホームが良いとこだ。
液晶やテレビの中の著名人は煌びやかな生活をする。
庶民はそれを見て羨ましがる。自分達もあんな生活をしたい。
あんな服が着てみたい。あんな料理が食べてみたい……etc。


だが、そうは思っても自分達とは住む場所が違う、才能がどうの、生まれがどうのと私達は彼らと違う。
何の長所も無い一般ピープル。毎日、特に楽しいことはなくともこうやって家族で一家団欒できるだけましだ。
路地裏や橋の下にいるホームレスに比べたらなんて人間的な生活なんだろう。

"ああ"はなりたくないから頑張ろう。

そして、お前も頑張れ。


と自分の子供達に言う。魔法のスローガンを聞かせながらどうしたらそうならないかを教える。

俺はこれに虫唾が走る。
いや、それを通り越して鼻で笑ってしまう。
所詮、権力者共の手の平でいいように踊らされていることに気づかず、


【上見て暮らすな下見て暮らせ】の江戸時代ぶりだ。


日々、上に言われたことを自分が嫌でもそれが正しいと無理やり信じて生活する毎日。朝起きて、会社に行き、家に帰って寝る毎日。
誰もやらないような酷な仕事をやって僅かな金をもらって喜ぶ毎日。


こんな惨めな人生送っていて楽しいのか……?


正当化されて"世間の常識"として良い様に使われて過ごす人生が本当に楽しいのか……?


少なくとも俺は嫌だ。


そんな生活面白いどころか、死んでいるのと変わらない。

どこかで聞いた言葉に【治らない病はない。もし、それがあるとするなら、死だ】というのがあった。

もし、それが本当ならこの世は死で満ちている。

"世間の常識"に良いように踊らされて何の疑問も持たずに生きている連中は死んでるも同じだ。

良いように騙されているということに気づかない"お人好し"という死病に冒された死人が俺の周りを歩いている。



何の夢や希望も持たず、今の生活に満足しきった保守派の旗を握って隊列を組んで。


俺は"ああ"はなりたくない。


あんな製造番号が何処かについていてもおかしくない連中と一緒にされたくない。
何の変哲も無い人生を送ることが当たり前だと本気で思っている。

いや、変哲が無いということに気づいてないといったほうが正しいか。
それがおかしいということに気づかない連中だ。



【廃人は自分が廃人ということが分からない。自分がやっている廃な行動が彼にとっては当たり前だからだ】



ある時期から急速に普及したネットゲームのヘビーユーザーのことをHIGH=廃と称される。
その強烈なプレイは、寝る間や家族や友達との団欒の時間も惜しんで一日10時間以上もパソコンモニターに向かう彼らの鬼気迫る姿を見ればこの俗称も納得がいく。


まぁ、ここで言いたいのはヘビーユーザーが悪いというのではなく、全てのことに
おいて"おかしい"ということに気づかない今、俺の周りを歩いている死人に対して嫌悪を感じる。

なんで"おかしい"ことに気づかず平然としていられるんだ。

"おかしい"ことに気づいてしまった俺は理解できない。"おかしい"ことが分からない連中は俺を理解できないだろうが。

俺はとにかく周りの連中と同じように権力者達のロボットになりたくなった。
汗水垂らして働くのは別に嫌いじゃないが働けば働くだけヤツラが楽に得をするのが耐えられなかった。
ロボットにならずに上の連中と対等以上の立場になるためにはどうしたら良いか。



俺は何に向いていてできることは何か……






――見ていると腹立たしい街並みに嫌気が差したので俺は"路地裏"へと入る。


ネオンや電灯が入り込まず、薄暗く、様々な異臭が混ざった独特の臭いが漂う表通りとは異質の空間。



ここには表には無いものがある。




――表では違法となる物が。


焚き火に当たっているホームレスや何かの取引をしている連中が俺が歩き、通り過ぎるのを横目で観察するがすぐに目線を元に戻す。


「お兄さん、何か食べるものをくれるなら何をしてもいいよ?」


年端も行かない小学生ぐらいの少女が俺の前に立つ。
素足に所々破けた服を着て髪や顔が垢とフケだらけのみすぼらしい姿。
こんななりでも"売り"で生計を立てているんだろう。ここ"路地裏"じゃ別段おかしなことは無い極ありふれた仕事だ。

俺はそっち系の趣味じゃないので無言で通り過ぎる。


「待って、お兄さん! 私……もう三日も何も食べてないの……」


少女は、俺の服を掴んで離そうとしない。光の無い眼が俺をじっと見つめる。
ああ、うざったい。こんな得体の知れないガキと犯ったら病気の一つや二つにかからないほうがおかしい。
せめて犯るならもっとまともな女が良いがさっき仕事を終えたばかりで金が入る。
こんな哀れなガキに飯の一つや二つやっても良い気分だ。


「ああ、分かった。お前の好きなもん食わせてやるよ」


「え、ほんと……? きゃっ!? あ……んっ……」



俺は、少女の薄汚れた服に手を突っ込む。ヤりなれているのかガキの癖にいやらしい声を上げる。


「あ、あ……ん……?」


俺は少女の服から手を引き抜く。


「それで一人で食って来い」


少女は俺が一体何を言ってるかわからないとでもいうようにぽかん、と口をあけて呆然とするが服の胸に当たりに入ったものを見ると目の色が変わる。

信じられないとの喜びの表情でそれが確かなものだと確認しようとするが俺はそれを制す。



少し顔を出していた1cmほどの厚みの札束が少女の服へと引っ込む。


「おい、服から出すな。金目当ての連中がごまんといるんだ。俺の気が変わらないうちにそれを持ってさっさと行け」


少女はこくん、と頷くと足早に向こうへと消えていった。



俺はそれを見送ると上着から新たな煙草を出して吹かしながら歩く。
異臭のする空間に紫煙が広がり、やや甘く刺激を含む香りが混じる。

程なくして、袋小路に着く。



「――今回の報酬をくれ」



俺は、誰もいない行き止まりの壁のある一点を見つめる。

いつから居たのかそこには女が居た。


橙色に染め上げたウェーブがかった髪を靡かせ、白いブラウスと茶系のロングスカートの裾から黒のブーツを覗かせた女。
この場に似つかわしくない清楚な服装で綺麗という言葉がよく似合う。



「そうね。ビジネスの話といくわ、今日の報酬と次のターゲットの話込みでね」

女が屈託の無い満面の笑みを浮かべ、彼女がつけている香水だろうか桃の香りが辺りをやさしく撫でた。


                            To be continued……

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