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情報の真偽は自己責任☆
2005年10月15日 (土)
●魂歩No.01 起章【The price of a life】



コツ……コツ……



乾いた音が響く。



革靴が立てる音は布に吸収されてか小さくあまり響かない。

細やかな幾何学模様のタイルで覆われた白い天井、

塵一つ無い手入れの行き届いた艶やかな茶色の床。
その二つの間は白い壁で覆われ等間隔で十字の当て木が入った窓がつけられている。


――窓から見える景色は黒い。


今は夜なのだろうか。
幾何学の天井からぶら下がるランタンの明かりが柔らかな色彩を生み、辺りを照らす。洗練された無駄の無い気品あふれるデザインの廊下。

誰もいないのか無音が広がり、静寂が辺りを包んでいる。

廊下の曲がり角に置いてある歪さとシャープさを持つ花瓶に活けられた青いバラがこの空間に神秘性を増している。

まるで、写真や絵画などに描かれた時間が止まった空間。被写体の最も美しい表情をとらえているかのようだ。


――静寂に包まれ全てが止まってしまった場所。


青バラの置かれた角を曲がった後に見える景色もまた止まっているのだろう。


いや、止まってしまったのか。


――動から静へと。


紳士が着るような高そうなスーツに身を包んだ男達が床に寝ている。


一人二人ではなく、何人も。二十はくだらない。その男達は皆、手に銃を握り締め、眼を見開いている。


――全て、等しく眉間に2cmに満たない穴で穿たれて。

ほんの今まで呼吸をし、話し、動いていたであろう男達。今はもう動かない。
もはや、青いバラと同じだ。
動かない箪笥やランタンなどの無機物といったほうが良いか。
生命活動を終え動かない彼らは風景を作るオブジェクトとなんら変わりが無い。

生き物は生を失うと炭素と水素……etcの化合物からなる肉の塊になる。

生き物と"物"を隔てる境界線を引く方法はいろいろあるが【動かないもの="物"】といっても過言ではないか。



そんな動かぬ"物"で囲まれた空間の奥で何かが動いた。



口から紫煙をもうもう、と吐きながらドアに手をかける。

どこかのブランド物か丸と線で象られた模様が両襟に入った黒のコートに膝の辺りを破いたジーンズを履いた黒髪の男。

ドアには鍵がかかっているのか素直には開こうとしない。


すると、男はドアノブに手をかけたまま、腰を軽く落とす。


ふぅ、という息遣いと紫煙が上がる。


その直後、男が軽く身震いをすると馬鹿げたぐらいに激しい音を上げて扉が内側へと吹き飛ぶ。


まるで巨大なハンマーでぶたれた様に拉げ、破片が飛び散り部屋内部を顕にする。



中には、顔にやたらと傷跡が入った短髪の強面の男が二丁の機関銃を両手に待ち構えていた。だが、明らかに黒髪の男より重武装のはずなのに強面の男の顔には余裕が無い。苦虫を噛み潰したように青い顔をし、噴出す汗が顎先から滴っている。

黒髪の男は、ドアを破壊した時に握っていたドアノブを無造作に床に放りながら、紫煙を吐いた。



「てめぇの値段、伝えに来たぜ」



その声を合図とばかりに部屋に銃声が響く。

二丁の機関銃が織り成す16ビート×2+αの32ビートを超えるリズムでけたたましく室内の構造物を鉛弾で穿ち破砕する音を上げ、強面の男が絶叫と奇声の歌詞を歌う。

――断末魔の叫びと破砕の舞踊……

強面の男の眉間から血飛沫が上がり、廊下で横になっていた男達と同じ穴が穿たれ崩れ落ちる。

黒髪の男が握る銃口が紫煙を吐く。彼が口元から出すものと同じ色の紫煙を……



「てめぇの値は1000万ぽっちだ、死神に自慢しな」


                          To be continued……
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