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2005年06月24日 (金)
名前はまだない2

陽炎立ち上る暑い日々。毎日の夕方のニュースは今日も真夏日でしたと言い出して久し
い。昨今は異常気象というものか。四月三十日の時点で28度と気の早い初夏が訪れ今日に
至る。熱風が動き音が鳴る。暑さを紛らわせるための風鈴だ。その涼しげな音を聞きなが
らうちわで仰ぐ面々。その顔は熱にうなされ毛怠そう。それもそのはず狭い部屋に寿司詰
め状態。人の熱気で簡易サウナ。ちなみにエアコン故障中。そこで提案。気分転換でどこ
かいこう。行き先は多数決で海に決定。海水浴と洒落こもう。ビーチバレーや水上騎馬戦
ぽろりもあるよ。
楽しい時間は早く過ぎあっという間に日は落ちる。夜になったらやることはあれだ。夏と
言えば肝試し。驚き恐怖で涼を取ろう。今宵の場所は海水浴場。離れた場所の島。海岸
そって山に入り道を登って神社に至る。社の奥にあるお守り持って帰れば無事完了。単純
明快さぁやろう。順番は籤引きで決まる。懐中電灯片手にペアが行く。薄気味悪い山道は
奥へ行くほど森が険しく暗い。普段慣れない山道は疲れる。風に木々が擦れる音、それが
気分を盛り上げる。親しくない間柄それでも世間話をしながら歩き行く。内心かなり歩い
たつもりだがなかなか
目的の社は見えてこない。山の黒はどんどん黒く。そこで彼女が声挙げる。そちらを見れ
ば見えるは社。急に元気になった彼女を追い掛け迎う。闇夜に浮かぶ茶色と黒のコントラ
スト。歩く度にぎしぎし床が鳴く。目的のお守り探すが見つからない。探す場所はもう社
の中しかない。彼女が開けたがらないので開けてみる。中はしんと静まり色が濃い。乗り
気でない彼女を置いて先に行く。遅れて彼女が入って先に行く。辺りを見渡し得意げに彼
女が何かを拾い上げてせる。古びたお守り一つ。ぷらぷらそれは揺れている。さぁ帰ろう
、と疲れを見せずに軽快に言う彼女。
来た道をひた歩く。辺りは既に森の中。周りは暗いが気分は明るい。それはそのはず元気
な彼女についつい釣られてしまう。ぽつぽつという前奏が鳴る。ざぁーという葉が打たれ
る音が続き、あっという間にどしゃぶりに。今日は雲一つない快晴っていってたのに、と
彼女がぼやく。でも、言葉と違ってなんだか楽しそう。行きはよいよい。帰りは恐い。
雨でぬかるむ道をひた歩く。彼女がちょっと待ってよと何かを取ってくる。それは大きな
葉っぱでちょうど傘のよう。二人でさしてまた歩く。歩けど歩けど海はまだ見えない。
そして、突然の稲光。と同時に激しい雷鳴。何度も何度も光って鳴り響く。その音はなん
だか踏み切りの音みたい。
突如、森が騒めく違和感。何か急がないと不味い。よくわからない。でも、彼女もそう感
じたみたい。二人で道を走る。遅れる彼女の手を握り走る。ひた駆ける。でも、違和感は
なくならない。いや、どんどん近づいてくる。闇に慣れた視界は映る景色を目尻に飛ばす
。それはかなりの速度。なのに近づく違和感はなくならない。突然、腕が重くなる。彼女
の足がもつれて転んだよう。咄嗟に手を差し伸べ起こす。
突然、彼女が声上げる。それは否定の意。そちらを見る。ああ、なるほど。これが違和感
の正体。こんなのがいれば違和感を感じて当然。木々の間で揺らめく物体。そこだけ雨水
の流れが緩慢で水にインクを流したようにゆっくり渦を巻く。雷光がそこを屈折しながら
散乱する。起き上がった彼女が早く逃げようと引っ張る。再び走る。今度は無我夢中。後
ろからは相変わらずの違和感。ゴボゴボという変な音を大きく静止を訴える。それを無視
してひた走る。そして、視界が開ける。助かった。これでこの馬鹿げた肝試しもようやく
終了。おつかれさま。
茂みを抜けた足が踏むは空中。何も無い空間。速度の乗った体は支えがないので落ちるだ
け。二人揃って落ちていく。彼女を抱く形で落ちる。どんどん落ちて眼に映るのは崖の
上。なるほどそういうことか。今まで山だと思っていたのは森。そう木が生えただけの
森。宙に浮かんでいる以外は至って普通。森が球を中心に生えたいが栗のよう。今まで同
じ場所をぐるぐる回っていたみたい。そのイガから一つの物体が飛び出す。それは先程の
違和感。真っすぐこちらに突っ込んでくる。落ちる体は自由が効かずかわせない。違和感
がぶつかる。
衝撃は至ってソフトで痛みはない。すぶずぶと体がめりこむ。腕が足が体が沈みゆく。
あっという間に二人共違和感に包まれる。内は水中。抵抗が強くて動きづらい。だが、そ
んなことより息苦しい。このままでは窒息は必至。抜け出そうと藻掻くが無駄な足掻き。
彼女が口から多くの泡を吐き出し動きを止める。同じくこちらもそろそろ限界。最後の力
を振り絞り悪あがき。その時、ふいに思い出す。ポケットからそれを出して握り締め、一
番濃いそうな違和感内部に殴り込む。こぶしが通った軌跡が綺麗に割れてすんなり届く。
それと同時に違和感が
そこを起点に砕け散る。大きなものから小さなものへ。まるで水が詰まった風船が割れた
様。飛沫に塗れ二人は落ちていく。最後の力で彼女を庇うように抱き抱える。そこで意識
が途切れた。―――ゆさゆさと体が揺れる。眠いので無視。再び、揺らされ声が続く。た
まらず眼を開けると目の前には彼女の顔。それは心配そうだったが直ぐに明るいものとな
る。なんだかわからなかったけど助かって良かった、というのを耳にする。それに頷き返
す。手を広げるとそこには一つのお守り。これがきっと守ってくれたんだろう。袋は少し
焦げ付き穴がちらほら
。さぁ、帰ろうと彼女は歩き出す。空はもうすっかり晴れて星空がきらきら光る。いっ
しょに歩こうとしたところでふと気付く。こちらを見ている一つの視線。彼女とは別の第
三者。薄気味悪くて無視を決めようと茂みを抜ける。そうしようとしたとき、ふと気付く。
ああ、なるほど、そうだった。全てに気付き納得。彼女に向けて言葉を放つ。手にしたお
守りを彼女に渡す。訝しげな顔をして受け取る彼女。早く来るんだよ、と手を振り先に行
く。それを見送り。視線を移す。その先は第三者。こちらを見つめこくりと頷く。それが
手をかざし、振り上げ
動かし、振り下ろす。それと同時に遮断機の鳴る音が響き渡る。そして、誰もいなくなっ
た。残るのはただの森。夜の静寂を持つただそれだけ。 ―――あ
れ?ここは…。辺りを見渡せば家の中。天井には電気が輝く。むー、と額に皺を寄せるも
思い出せない。何で私はここにいるんだか。しばらく唸っているとドアが開く。「お、気
が付いたか。相変わらずの間抜け面に力を込めても可愛くはなんねぇぞ。」む、その声は
斎藤高志。元元かわいい私はこれ以上可愛くなる必要はないのよ
「どうした!こんな真夜中に韓国ドラマ爆音で見てんのか?私は元元可愛いから大丈夫!
とかなんて今じゃそんな台詞誰も萌えねぇぞ。それよりこっち手伝えよ。今日、撮れたて
のお宝秘蔵水中騎馬戦でぽろり写真の編集トレカ化作業!今日一番の特ダネ、~まさか信
じられない~清水先輩の頭は実は〇〇〇。それなのに先輩が写真持って部屋に立て籠もっ
てるんだ。今、みんなで奪還をはかってるんだが先輩が辺りにブーピートラップ仕掛けま
くって何人も犠牲に…というわけで数が足りないから早く加勢に!」そういうと藤村はヘ
ルメットと釘打バット
を片手に勢いよく飛び出していく。道理でさっきから外が騒がしいと思った。まあ、この
部じゃ日常茶飯事だけど。「そういえば、私何でここで寝てるの?肝試ししてたと思った
んだけど。」私が聞くと外の様子を伺っていた斎藤が答える。「ああ、肝試しが終わって
人数確認のときに大橋先輩が見つけて来たんだ。だらしなくでかい口を開けてぐうぐう寝
てたんだとさ。」「え、そうなの?覚えてないなー。散々山の中歩いたような気がするん
だけど…って、ちょっと!」斎藤は部屋を飛び出し戦場へと消えていった。少しの間を置
いて激しい爆発音が
鳴り部屋が揺れた。ホント毎回馬鹿ばっかやってるなうちの連中。さてと、私も参加しま
すか。そうしようと布団から出る。「なんで服が変わってんのよ!しかも、某ファミレス
そっくりなひらひら付き!服脱がしたやつ出てこんかい!」声と同時に何かが破砕する音
が響き外はいっそう賑やかになる。誰もいなくなった部屋には静寂が訪れる。干された喜
多川の服と小さな小物が静かに揺れていた。それは焦げて小さな穴が空いたお守り。
                                    
                                     END













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